心によりそう図書館

これまでに読んだ本を感情別、内容別にカテゴリー化して紹介していきます。どうかお気軽にお立ち寄りくださいませ。

「四十回のまばたき」重松清著

主人公「圭」は売れない翻訳作家。周囲の人々からは、「自己完結している、バランスの取れた人、一人でも生きていける人」と見られている。妻を交通事故で亡くしてしまい、悲しむものの泣くことができず、モヤモヤとしていた。だが、葬式の後に妻の不貞を知り、ますます涙は遠ざかり、自身の感情を見失うような感覚になる。

妻には「冬眠」をする妹がいた。SAD(季節性感情障害・季節性うつ病)という病名で冬になると22時間眠ってしまう、うつ状態に入る。

毎年秋から春にかけては、妻のもと、つまり主人公のもとで冬眠をしていたのだが、妻が死んだあと、主人公はこの妹と関係を持ってしまう。妹は妊娠し子供を産むというが父親は誰なのかはわからない。それでも、例年通り主人公のもとで冬眠を始める準備をし、主人公に家族になって欲しいと言う、「親子にならなくてもよいから家族になってあげて。」と。主人公はそれを引き受ける。

そんな時、主人公が翻訳した一冊の本がベストセラーになる。この本を書いたアメリカ人作家「セイウチ」と時間を共有し、圭は自分の心の穴に気が付いていく。「セイウチ」は粗暴で感情的でお酒ばかり飲んでいるような人間だが、心の穴への対処が違うだけであることにも気が付く。人間はみんな心に穴を持っている、そしてそれで良いんだと思わせてくれる。「生きていること」が何よりも素晴らしく尊く、強い。

『40回のまばたき』これは「セイウチ」が生きることが苦しいときの対処方法として伝授した言葉でした。

 

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四十回のまばたき (幻冬舎文庫)

本の帯は2021年幻冬舎文庫のフェアのもので

幻冬舎文庫心を運ぶ名作100。」

 

裏表紙

結婚7年目の売れない翻訳家圭司は、事故で妻を亡くし、寒くなると「冬眠」する奇病を持つ義妹耀子と冬を越すことになる。多数の男と関係してきた彼女は妊娠していて、圭司を父親に任命する。妻の不貞も知り彼は混乱するが粗野なアメリカ人作家と出会い、その乱暴だが温かい言動に解き放たれていゆく。欠落感を抱えて生きるすべての人へ贈る感動長編。

 

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