心によりそう図書館

これまでに読んだ本を感情別、内容別にカテゴリー化して紹介していきます。どうかお気軽にお立ち寄りくださいませ。

「舟を編む」三浦しをん著

「言葉を大事にしよう。」が読み終わった後の一番の感想でした。

 

対人関係が不得手な主人公「馬締光也(まじめみつや)」は本ばかりを読んで青春時代を過ごし、出版社に就職します。

馬締は読書好きなのですが自分の気持ちを言語化する能力が低く、好きな人に書いたラブレターは便せんで15枚という大作で、中身には漢文が混じるという有様。

馬締は出版社で辞書を編纂することになるのですが、辞書制作に費やした時間は15年。辞書制作を通していろいろな人と出会い、成長していきます。

馬締を取り巻く人々の人間模様も楽しいです。

変人扱いされることが多い馬締ですが、辞書制作にかける情熱は熱く、その情熱によって周囲の人は馬締を支えようと頑張りますし、馬締も自分のためだけではなく、人のために辞書を完成させたいと強く願います。

 

「何か一つのことに夢中になれる人は変人扱いされることも多いけれども、それ以上に人の心を打つ。」ということも教えてもらった本でした。周囲から浮くことが怖くて好きなものを好きと言えなかったり、自分の気持ちをごまかしたりすることが逆に恥ずかしいとさえ思えました。

 

Amazonに飛びます☟

舟を編む (光文社文庫)

 

裏表紙

出版社の営業社員・馬締光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。新しい辞書『大渡海』の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。定年間近のベテラン編集者。日本語研究に人生を捧げる老学者。辞書作りに情熱を持ち始める同僚たち。そして馬締がついに出会った運命の女性。不器用な人々の思いが胸を打つ本屋大賞受賞作!

 

解説より抜粋  平木靖成岩波書店 辞典編集部)

辞典をもっと自由に言葉を使うために使って欲しいと常々思っている。

辞典で得た情報を踏まえて、言いたいことをきちんと伝え、かつ相手の心に響く自由な表現をするために使ってもらえないかと思うのだ。

外国では自国語の辞書は公費を投入して編纂されるが、日本では公的機関が主導して編んだ国語辞書は皆無。私企業が辞書を編纂する意義について「言葉は、言葉を生み出す心は権威や権力とは無縁な自由なものなのです。また、そうであらねばならない。」と本文中で老学者は話している。

辞典が権威や権力として言葉を縛るのではなく、道しるべでありたい。そんな辞典づくりの思いを代弁してくれているようにも感じた。